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新英語教育研究会神奈川支部HP

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ルター、学校に行く(共学編22~31)

2003-6-13  ルター、学校に行く(その22):生徒を助ける「3枚のお札[ふだ]」の話
 中1の会話の授業。しかし、今日はティームティーチングではないのをいいことに、会話ではなく、「単語の覚え方をやってみましょう」と言って、板書して説明を始めた。
 そして、説明が終わって、みんなに質問。「家で勉強しなさい、って言われている人、手を挙げて」と言ったら、半数以上が手を挙げた。そして「言われて、やる気の出た人は?」と言うとゼロ。当たり前だ。ではどうするか? お札[ふだ]作戦だ。小坊主がヤマンバに追われて、お札を貼りながら逃げる、あの民話の「3枚のお札[ふだ]」のように、手作りで作った単語の用紙が、「勉強しなさい」という言葉を言わせなくする、お札[ふだ]になるのだ。
 「この単語の紙を自分の机の上に置いて学校へ行く。そうすると留守の間に家族(お母さん)が机の上にあるのを見て『まあ、勉強しているわ!』となる。そうすれば大丈夫です。勉強しているよというアピールをして周囲に安心してもらう。これが大事です。変われるのは他人ではなく、自分です。」と説明したところ、生徒から「おお」というどよめきが。
 今日はクラスの2~3人は確実に救われたであろう。

余談:授業のあと、「先生、うちではそんなのでは効きません」と訴える生徒が数人いた。「まずやってみて、ダメだったら相談してください」と言うより他なかった。生徒の悩みは深い。(お母さんが会話学校で英語を教えているという中一女子は「初めての中間で94点とったら、お母さんにバカって言われちゃった」と言った。それはないよなー)

●単語の覚え方(中学1年生~)
 (1) A4程度の白紙を(罫線を引く代わりに)短冊状に折る 
 (2) 左に単語、右に意味を書く 
 (3) メンバーに課題として出して、レッスンに持ってきてもらう
 (4) 小テストを行う
 (5) 間違ったつづりに赤ペンなどでアンダーラインを引く
   また出来たら、小さくマル、間違ったらバツをつけていく。
 (6) この(4) (5)の過程をす
 (7) 最後は間違った単語にのみのテストをする
(a) 品詞分類:〈名詞〉〈動詞〉〈形容詞〉〈その他〉の4枚で構成。
(b)  形態分類:
【-ed】:「[d]の発音」「[t]の発音」「[id]の発音」を3列で分類
【-ing】:「playing」「taking」「running」「lying」を4列で分類
【-(e)s】:「likes」「washes」「studies(子音+ies)」「plays(母音+y)」を4列で分類

2003-6-17  ルター、学校に行く(その23):対比について
 家庭教師で教えている中2の女の子の学校の生徒は、みんなおませさんなので、コクる[つきあってくれと告白する]のが流行中で、彼女も2人の男の子にアプローチされている。やりとりは携帯のメール。その1人からメールで「映画に行こう」と誘われ「いいよ」と返事した。でも彼女はその男の子とは一対一でつきあいたいというより、ちょっと距離を置きたい。そこで彼女は考えた。映画に2人で行くのは気詰まりだ。昔なら弟や妹をボディーガードにつれていく、という手もあったが、現代では流行らない。
 そこで、メールで牽制しておくことにした。
「だれ 誘うの?」と訊くか
「だれか 誘うの?」と訊くか。
さて、どちらがいいのか。そこで彼女は自ら結論を出した。

「だれか 誘うの?」のいうと、まるで「2人で行きたい」と思っていると思われかねない。それは本意ではない。ニュートラルに響き、かつ誘うのを前提にしているように聞こえるのは「だれ 誘うの?」の方だ。だから「だれ 誘うの?」をメールしようと。
 中2にして、この言語感覚。すばらしい。(女ってこわいナー。)
 この話を余談として冠詞の解説を高3にしたあとで話した。「言外の意味を出すかどうか、対比的に話すかどうか、この選択は英語の冠詞や日本語の助詞の機能にまかされている」と。今日はみんなは真剣に聞いていたなー。

2003-6-19  ルター、学校に行く(その24):タマネギと快眠の関係
 昨日、テレビを観ていたら、快眠の方法を紹介していた。
 1 パジャマを着る
   スウェットを着て寝ていた人で寝付けなかった人が、
   パジャマを着たら快眠できた。
   空気の流れが滞る、化繊のスウェットではなく、
   綿100%でふつうに首や手元の空いたパジャマがよいとのこと。

 2 タマネギのスライス(三日月状のものを5つぐらい枕元に置く)
   保育園でお昼寝の時間、興奮して40分も寝付けなかった子どもたちが
   タマネギを少しつつんでパジャマの肩の辺りに取り付けたところ
   10分で寝付けた。部屋にも少し皿に置いた。 
   脳波を測定すると、タマネギのにおいで変化があるそうです。
 
 この話を英語科の部屋でしたところ、高1の生徒たちに少し手を焼いている先生たち(私を含む)は全員、「高1の教室にタマネギ置くといいねー」と意見が一致。(冗談抜きで、ほんとうに置きたいくらいだ。)

2003-6-22  ルター、学校に行く(その25):感情や体調を表す-ing/-ed
●感情や体調を表す-ing/-edと動作を表す-ing/-edで2つに場合分け
 この場合分けが本当に大切です。
 先週は高1のみんなに「感情や体調を表す-ing/-ed」の使い方を確認した。

●感情や体調を表す-ing/-ed「物事の評価は-ing」「人の気持ちは-ed」
surprised びっくりして…
excitedわくわくして…
bored退屈して…
カッコ内のような日本語訳を中間言語としてあててみると理解しやすい。
(1)述語動詞として
(a)be動詞「~いる」とgetなど「~になる」と用いて 
 I am tired. 「私は疲れている」
(私は  いる 疲れて…)
 I was tired. 「私は疲れていた」
(私は  いた 疲れて…)
 I got tired. 「私は疲れた」
(私は  た 疲れ…)
・be動詞:I am tired. (私は/いる/疲れて…)
・getなど:Iユve got tired. (私は/ちゃった/疲れ…)
(b)五感をあらわす動詞と用いて 
・感覚feel / look / seem:You look tired.(君は/見える/疲れて…)

(2)他動詞として用いる
 物事     他動詞        人
His lecture  bores       me.
[彼の授業は (ふだん)退屈させている]  
彼の授業は退屈だ。
His lecture  satisfies      me.
[彼の授業は (ふだん)満足させている 私を]
彼の授業には満足している。
(3)SVOCを用いる
(a) 物事を主語にしてmake
物事    make           人     -ed
His lecture  makes         me    bored.
[彼の授業は (ふだん)~状態にする] 私    退屈で…
彼の授業に私は退屈している。
(b) 人を主語にしてfind
 人    find      物事       -ing
 I  find    his lecture    boring.
[私は ~と見なしている] 彼の授業   退屈な…
彼の授業は退屈だ。
そして、このSVOCをSVCに組み替えるとき、前置詞が必要になる。
(a) 「驚いて…」はlook at~「~を見て」のイメージでat
be surpeised at~
(b) 満足・不満足はwith
be satisified with ~
be pleased with ~
be bored with ~
(c) 意識や恐怖はof
be afraid of ~
be frightened of ~

 授業の途中で、2人の生徒が関心を持ちはじめて「いい授業だなー」と言ってくれてうれしかった。
 しかし、この授業の後、生徒の1人が「先生、まずいですよ」と言ってきた。「ノート2枚半も書いちゃいました。多すぎますよー」と。
すまん、すまん、力が入り過ぎちゃって。

2003-6-26  ルター、学校に行く(その26):インタビューテスト
 今日はALTのアンさんといっしょに高1の会話のクラス。
How do you feel when your favorite team wins the game?と質問して、I feel glad / happy / excitedなどを答えてもらう。そこでついでにDo you like vbaseball? What team do you like?と訊いてみた。横浜ベイスターズファン2名、ヤクルトスワローズファン1名、阪神タイガースファン1名がいた。
 横浜ベイスターズファンに「ファンはいい人が多いんだって?」と訊くと「そうです」と、はにかむような笑顔。なるほど、本当だった。
頑張れ、ベイスターズ! ファンを泣かすな。

2003-6-28  ルター、学校に行く(その27):準動詞[不定詞・動名詞・分詞]に「いつ」「だれが」という情報を盛り込む
 高3の授業。大きな枠で文法項目を教えたかったので、準動詞[不定詞・動名詞・分詞]に「いつ」「だれが」という情報を盛り込む、という内容で板書した。
 (1)不定詞
 (a)いつ 
   to do (これから)~する…
   to have done (過去に)~した… (すでに/ずっと)~している…
 (b)だれが 
   (for) me to do 私が~する…
   It is difficult for me to play the piano. 私がピアノを弾く…
   He wants me to play the piano. 私がピアノを弾く…
 (2)動名詞
 (a)いつ 
   doing (過去に)~したこと 
      (今その場で)~していること ~すること
   having done (過去に)~したこと
 (b)だれが 
   my doing 私が~すること/~したこと
 (3)分詞
 (a)いつ 
   doing (今その場で)~して…
   having done (すでに)~して…
   done (すでに)~して…
 (b)だれが 
   me doing 私が~して…
   me done 私が~されて…
 
 このような抽象的なまとめ方はもっとあとでもいいのかもしれないが、今、教えておきたいと思って教えてしまった。英語教育関係者しか、わからない内容ですみません。

2003-7-1  ルター、学校に行く(その28):現在進行形とwill doの使い分け
●現在進行形とwill doの使い分けは
 現在進行形:「(これから)~する」=発話前から決めてある予定
 will do:「(じゃあ)~しよう」=その場での決意
 の違いである。

 Murphy, Raymond, Basic Grammar In Use, 2nd Edition, Cambridge, 2002に載っている練習問題では、
 A: Why are you putting on your coat?「なぜコート着ているの?」
 B: Iユll go out. 「(じゃあ)出かけよう」とその場での決意するのは不自然、、
 Iユm going out. 「(これから)出かけます」は自然な発話。

 S先生(アメリカ滞在5年)はALTのアンさんに「明日来ますか?」と確認を取るのに、現在進行形で
 Are you coming tomorrow?「明日来ますか?」と自然に訊いていた。
 ちなみに、
 Will you come tomorrow?では勧誘「明日来ない?」になってしまう。
 (Will you come with me?「いっしょに行かない?」は自然な発話)

 このような現在進行形の使い方が日本に普及するのはいつの日か?
家庭教師先の中2の女の子に訊ねると「8年後、ぐらいかな?」との答え。そうか、そんなにかかるか。今日は高3のみんなには少しわかってもらえたかな。

2003-7-2  ルター、学校に行く(その29ム1):As / Since / Becauseの使い分け
 ルターには心強い味方がいる。ライティングを高3に指導されているK・S先生だ。今日は「becauseはby causeからできているのよ」とステキなヒントを下さった。そこでルターは日頃から考えていた「As / Since / Becauseの使い分け」+「譲歩」の用法について話した。おおむね納得していただけたようでうれしかった。

●As / Since / Becauseの使い分けは
 Becauseは「出来事」の因果関係を物語り、動作に関心がある。
 Asは「状況」を説明し、人や物事の状況に関心がある。

 そしてSinceは「譲歩」=「説得のレトリック」と考え、
 ...., since......は「(すでに)~なんだから」と現在から過去のことを根拠に説得。
 Now that..., ......は「(今や)~なんだから」と現在のことを根拠に説得。

Now (that) Johnユs arrived, we can begin. (L2)
ジョンが来たんだから、始められるよ。
Since you canユt answer the question, perhaps weユd better ask someone else. (L2)
君が答えられないんだから、他の人に尋ねた方がよさそうだ。
Since youユre on your feet, hand me the tin of peaches, will you? (C1)
立って居るのだから、モモの缶詰取ってよ。

 以上、SinceとNow that...と組み合わせて「譲歩」の用法として説明するところがフレッシュでしょ? 

 ルターの解説法のフレッシュさは、冠詞の説明では不定冠詞のa / anと 形容詞someを組み合わせるなど、機能を優先させた意外な組み合わせにあると自負している。またA=Bのようにイコールで安易に説明されてきた2つの文法事項の違いを解説する。それがルターの真骨頂だと思っている。
(自画自賛、おそまつさまでした)

2003-7-3  ルター、学校に行く(その29ム2):「譲歩」に関する誤解
●「譲歩」でeven ifとeven thoughは同じではない
 even thoughは「(過去に)~だけれど」と現在から過去のことを根拠に説得。
 even ifは「(もし)~としても」と現在から未来のことを根拠に説得。
 ということで、使い方が違う。これはラジオの「やさしいビジネス英語」で杉田先生が昔に取り上げていた。すばらしい観点だ。
●【even ifノ】仮定(未確定)「(もし)~としても」
□ Even if you dislike ancient monuments, Warwick Castle is worth
  a visit. 古いのは嫌いかもしれないけど…、ウォーウィック城は行くに値するね。 (Quirk)
□ I like you, even if you donユt like me. (Swan)
あなたが好き、私を好きではないかもしれないけど…。
●【even thoughノ】事実(確定)「(実際に)~だったけれども」
■ Even though I submitted my college application, I havenユt yet decided to go to America to study. (やさしいビジネス英語)
(実際に)大学に願書は提出したが…、アメリカに勉強に行く決心がついていない。 (やさしいビジネス英語95.4.16)
■ Even though it was raining, we had to go out. (Longman)
(実際に)雨が降っていたが…、出かけなくてはならなかった。
●【althoughノ】
■ No goals were scored, although it was an exciting game. (Quirk)
ノーゴールで得点はなかった、(実際に)試合は盛り上がったけれど…。

2003-7-17  ルター、学校に行く(その30):ちょっとうれしかったこと
 いつもは2分割で教えている高1のクラスを合同で授業した。いつもは教えていない生徒が半数いて、その1人の男子がどうやら私のことを「あんな先生~」と、けなし始めた。すると、私が教えている方の生徒のKくんが「そんなことないよ。授業、おもしろいんだぞ」と助けてくれた。ざわざわしている教室の離れたところから、そんな会話が聞こえてきて、ちょっとうれしかった。
 そういえば、このKくんにはこんなエピソードがある。感情や体調を表す分詞では「満足不満足はwith」(be pleased withなど)、「恐怖や意識はof」(be frightened of ~ など)という観点で板書でまとめて見せたら、「おもしろいなー、この授業!」って、数週間前の授業で言ってくれたのだった。
 夏休み前の最後の授業、ホッとした一瞬だった。

2003-8-8  ルター、学校に行く(その31):今、学校で起きていること
 知り合いの先生方に伺ったところ、東京都も神奈川も「職員会議で賛成反対の決を採らない」という。議事録にも「賛成何名、反対何名」と書いてはいけないという。なぜなんだ、わけがわからん。
 作家の庄司薫さんが書いていたように、民主主義とは「他者との連帯」をめざし、「価値の多元性相対性を前提とする」が、「ウサンクサイ知的フィクション」だと思う。(『バクの飼い主めざして』) そして庄司薫さんは、こういう知的フィクションはぎりぎりのところで支えられてきた、その「ぎりぎりさ」加減を大切にしたいということも、書いていたと思う。
 一方、民主主義は多数決方式に支えられていて、かなり接戦になった場合に少数派とは言い難い多数派を否定することもあるので、ある意味で暴力的である。しかし、知的フィクションとしては、いい発明だったのではないだろうか。
 ところがである。今の世の中の流れは、東京や神奈川の職員会議では4年ほど前から、多数決を採らせないで「校長の裁量」で決めてしまい、そして、これから進む大学法人化では、教授会の決定は参考意見で「学長の裁量」ですべてを決めてしまう、という方向らしい。これって、独裁orファシズム? 
 生徒に「自己表現」を迫っておいて、自分たち教員は「だんまり」? わけわからん。おかしいぞ。

2003-9-3  ルター、学校に行く(その31):S先生のライティングの授業
 S先生の高3のライティングの授業のプリントをいただいた。KIRO Newsというシアトルにある放送会社が、イラクにいる女性兵士の訴え(2003.8.14)を報告している記事。暑い中でエアコン無し、一日にボトル2本の水とパック入りの食事で我慢していて「ここ(イラク)にいる理由がない」と訴えている。
 こういう記事を読ませ、いくつか質問した後、What is your reaction toward this story Write at least with five English sentences.と書かせる。
 いやー、すばらしいなー。


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